新人透析看護師のための血液検査の見方

透析

私がいた透析クリニックでは月に2回、透析患者さんの血液検査が行われていました。

透析患者さんにとって血液検査は透析がうまく行えているのか、食事管理がうまく行えているのか、合併症などを知ることができる大切な指標となります。

私は透析看護師になったばかりの頃、患者さんへの血液データーの説明が苦手でした。

理由は今まで、病棟や外来で行っていた血液検査の基準値と透析患者さんとでは異なる点があったからです。

透析患者さんにきちんと血液検査の結果を説明できるように作成した、主な検査項目一覧表を基に新人透析看護師さん向けに説明していきたいと思います。

 






透析患者さんの血液検査の見方:透析前の採血

★スマホでは表が見にくいです。ごめんなさい(>_<)

透析の効率

項目 基準値 検査の意義 症状・対応・注意点
尿素窒素
(BUN)
70~90mg/dL たんぱく質が分解されてできる老廃物となって血液中に現れます。透析中で最も除去される物質。
BUNはたんぱく質の取り過ぎや消化管からの出血
などにより高値を示す。残存する腎機能が低下す
るにしたがって上昇する。
BUNが高値になり、尚且つ筋肉が落ちたり、
痩せてきた場合は食事が十分でないために筋肉を
構成しているたんぱく質がエネルギー源として使われていることが考えられ、食事からしっかりと栄養を取ることが必要です。
クレアチニン
(Cr)
男性:10~15mg/dL
女性:8~13mg/dL
筋肉の代謝産物で、筋肉の豊富な方ほど高く、体
格や運動量による個人差がある。食事に関与しな
いため、透析効率をみるための良い指標になる。
残存する腎機能が低下するにしたがって上昇する。
筋肉量の影響を受けることから、体格の良い患者
で値が高くなる。異常高値の場合、透析不足が疑
われ透析時間不足、血流量不足、回路内血液の再
循環、ダイアライザーの性能低下、カプラ接続ミス
等、チェックが必要です。
β2ーミクログロブリン
(β2-MG)
30mg/L以下 腎臓で除去されるタンパク質。透析で除去される
物質の中では最も大きいもののひとつ。長期透析
で高値になりがちです。手根管症候群や骨関節障
害などの透析アミロイドーシスの原因物質。
尿中に排泄されず、血液中に溜まり骨や関節に沈
着することによって透析アミロイドーシスを引き
起こす。心臓に沈着すると心臓の筋肉が縮みにく
くなり、腸や胃に沈着すると胃腸障害を引き起こ
す。

 

 

電解質

項目 基準値 検査の意義 症状・対応・注意点
ナトリウム
(Na)
135~146mEq/L 体液の浸透圧を保ったり筋肉や神経の働きにも関係しています。腎臓が悪くなるとNaを排泄できなくなり、数値が上昇する。 高値の場合は塩分の摂りすぎ、または脱水。脱水は水分が抜けてNaだけが残る。低値の場合は食事が摂れない、水分の摂りすぎ。
クローム
(Clℓ)
98~110mEq/L 主にNaCl(食塩)として摂取され、体液のバランス維持の役割を果たしている。血液が酸性に傾くと上昇する。 高値の場合は嘔吐・下痢などで大量の水分を失った場合、塩分の摂りすぎ。低値の場合は水分の過剰摂取や食塩の摂取不足など。
カリウム

(K)

3.6~5.5mEq/L 細胞、神経、筋肉の働きを正常に保つために必要な物質だが、透析患者は腎臓からのカリウム排出能が著しく低下しているため、K含有食品(生野菜・果物など)の摂取には十分注意が必要。 高値の場合は手足のしびれや麻痺が現れ、進行すると呼吸困難や重篤な場合には不整脈、6.5以上になると心停止などの危険がある。逆に低Kでも不整脈の誘発の危険性がある。

 

貧血

項目 基準値 検査の意義 症状・対応・注意点
ヘモグロビン
(Hb)
10~12g/dL 腎不全では貧血を合併しやすく、その治療のためエリスロポエチン製剤や鉄剤などにより改善を図る。胃潰瘍・痔などの出血性疾患にて低値となる。透析で急激に除水されるため、透析後は血液が濃くなり、ドロドロになって血管が詰まってしまう恐れがあるため、Hbの値は透析をしない人と比べると低めに設定されている。 高値の場合は原因として赤血球造血刺激因子製剤過剰投与、EPO産生腫瘍(胃癌など)がある。低値の場合は心不全症状、同期、立ちくらみ、息切れ、倦怠感、冷感などの症状が見られ、病態に応じてEPO製剤、鉄剤、葉酸、ビタミンB12などを投与する。
フェリチン 300ng/mL以上
50~100ng/mL
血液中に含まれるタンパクの一種で、鉄の貯蔵庫の役割を持ち、体の中にどのくらい鉄があるか反映します。また、鉄量とは関係なく、癌によっても高値になる。 鉄剤投与中の患者が高値なら続発性ヘモクロマトーシスと診断し、鉄剤投与を中止する。低値でも貧血症状がなければ自覚症状はあらわれない。

 

栄養

項目 基準値 検査の意義 症状・対応・注意点
総タンパク(TP) 6.2~8.3g/dL 栄養状態の指標となり、栄養不足になると全身状態が悪くなる。透析間の急激な体重増加で低下する。透析後は除水のため一般的に透析前よりも高値を示す。肝臓の合成能力が低下するとアルブミンが減少し、総蛋白量は低下する。特に慢性の肝臓病(肝炎、肝硬変、肝臓がん)では著しく低下する。また、腎臓が障害されるとアルブミンをはじめとするタンパクが尿中に漏れ出し、総蛋白量は低下する。 血清中の蛋白はアルブミンとグロブリンで、グロブリンはα1、α2、β、γに分類される。これらの蛋白はそれぞれ特有の役割を果たし、病気によって数値が特徴的に変動するため、病気の種類や重症度を判定できる。特徴的な蛋白分画パターンを示す病態として炎症型、肝疾患型、ネフローゼ型、M-蛋白型がある。
アルブミン) 3.5~5.0g/dL タンパクのなかでもアルブミンは主要な成分。低栄養、肝障害などで低下する。アルブミン値を維持するためには体重1kgあたり1.2gの蛋白質を摂取する必要がある。透析前のアルブミン値が高い方がそうでない方に比べて生命予後が良い。 充分なアルブミンは適当な水分を血管内に保持し(膠質浸透圧)、血中のアルブミンの低下により膠質浸透圧が低下し、細胞間質から血管内へ水を引っ張ってくることができなくなり、逆に細胞間質の方へ水が移行してしまい、むくみが出てくる。

 

骨代謝

項目 基準値 検査の意義 症状・対応・注意点
カルシウム
(Ca)
8.0~9.5mg/dL カルシウムは細胞、神経、筋肉の働きを維持するために必要。透析患者はビタミンDがあまり活性化できず、カルシウムの吸収力が弱くなっている。血中のカルシウムの低下とリンの上昇は副甲状腺ホルモンを大量に分泌してしまい、骨からカルシウムが抜け出て、骨が脆くなる。 カルシウムとリンが結合してリン酸カルシウムとなり骨を作る。カルシウムの値が高値になると異所性石灰化のリスクが上昇する。また、掻痒感、イライラ完、不眠、意識障害などの症状もみられる。低値の場合はテタニー、抑うつ状態、不整脈などの症状がみられる。
リン(P) 3.5~5.5mg/dL 骨や筋肉を作る大事なミネラルで、ほとんどの食べ物すべてに含まれている。主に副甲状腺ホルモンやビタミンDによって調整され、腸管からの吸収、細胞内外の移動、骨吸収と骨形成のバランス、腎臓からの排泄により変動する。透析患者は腎臓からリンを排出できないため、体にたまったリンは透析とリン吸着薬で取り除く。一日のリン摂取量の目安は800mg 高値になるとかゆみがでたり、カルシウム値が低下し、骨折しやすくなったり、血管が骨のように硬くなり(石灰化)、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こす可能性がある。低すぎると栄養不足が考えられ、生命力の低下につながるので注意が必要。
副甲状腺ホルモン
(PTH)
60~180pg/dL 骨や腎臓に作用し、カルシウムやリンのバランスを整える。腎機能が低下するとリンが体内に蓄積する。また活性型ビタミンDが低下することによってカルシウムが腸管から吸収されなくなり、血中のカルシウム濃度が低下し、副甲状腺から副甲状腺ホルモンが分泌される。副甲状腺ホルモンはカルシウムの貯蔵庫である骨を溶かして体に不足しているカルシウムを補う。 副甲状腺ホルモンはカルシウムを骨から調達する作用があるため、骨がすかすかになってしまう。それを防ぐたえの薬としてビタミンDが使用される。ビタミンDは腸からのカルシウムの吸収を増やし、骨を守る。
内科的治療が効かずに副甲状腺ホルモンが500pg/dL以上であり、直径1cm以上の副甲状腺干腫大がある場合は副甲状腺摘出術の適応になる。

 

感染

項目 基準値 検査の意義 症状・対応・注意点
CRP 0.2~0.5mg/dL 体内で炎症反応や組織崩壊がおこった時に血中に現れる蛋白質。 傷の炎症、感染症、心筋梗塞、糖尿病、尿毒症、手術後などにより上昇。病態の指標となる蛋白質。

 

糖尿病

項目 基準値 検査の意義 症状・対応・注意点
血糖

(BS)

空腹時70~100mg/dL

食後2時間値

140mg/dL未満

糖尿病により上昇。血糖コントロールの指標。 高値では口渇、多飲、多尿、体重減少などがみられる。低値の場合はめまい、ふらつき、しびれ、異常な空腹感、意識消失などがみられる。
*軽症の場合は無症状の場合が多い
グリコアルブミン
(GA)
12.3~16.9% 血液中の蛋白質のうちアルブミンが糖化したもの。糖尿病の病状を検査する目的で測定される値で、過去1~2週間の平均血糖値を反映する。

 

DW評価

項目 基準値 検査の意義 症状・対応・注意点
HANP
(ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド)
50~100qg/mL以下 心房への容量(水分)負荷を反映。透析中の除水に伴い速やかに低下するためドライウェイトの指標となる。透析後に採血し、おおよそ26~60qg/mLくらいが適正な値とされている。 100qg/mLを超える場合は体に水分が過剰と判断でき、少なすぎる場合は脱水状態となる。

 

血液以外の検査値

項目 基準値 検査の意義 症状・対応・注意点
ドライウエイト:DW

(透析時基本体重)

体重増加は

3%以内(透析間中1日)

5%以内(透析間中2日)

ドライウエイト(適正体重)は最適な状態を基準とした透析後の体重。むくみの有無、血圧、CTR、HANPなどから設定される。 体液量の増加は血圧を上昇させ、心臓に負担をかけることになります。DWが高く設定されていると水分が多い状態のため、血圧↑、心臓に負担がかかり、心不全に注意。DWが低く設定されていると無理に水分を引きすぎてしまうことになり、こむら返りや気分不良などに注意。
心胸比(CTR) 男性:50%以下
女性:55%以下
胸部の横の長さに対する心臓の大きさの割合。

水分貯留量の指標。

ドライウエイトを適正に維持する診断材料の一つ。

★病院やクリニックによって基準値は異なることがあります。

まとめ

透析患者さんは透析がきちんと行えているのか、自己管理はできているのかを評価するために血液検査の結果を正しく把握してもらうことが重要になってきます。

透析患者さんが検査結果ときちんと向き合って、効果的な良い透析治療が続けられるように援助していくことが透析看護師に求められます。

上記の透析患者さんの血液検査の見方を表にまとめてみました👇

新主な検査項目一覧

新人の透析看護師さんや透析室で実習する看護学生さんの参考になればうれしいです。

 

最後まで読んでくださりありがとうございました。









タイトルとURLをコピーしました